“きらきら”してるって何だろう
福山市にある株式会社Sakkuru(サックル)。
今回お時間をいただいたのは「石丸さなゑ」さん。
ある企業の総務部長、ある企業の取締役、飲食事業に、エステサロン…肩書きの数が分からない(笑)
公式では「5つの肩書き」なのかな?
今後、まだまだ増えそうなので「数」は深掘りしません(笑)
「ある時は〇〇」ではなく、すべてが同時進行。こういう働き方を「パラレルワーカー」という言うらしいです。
素敵です。格好いいです。憧れます。
石丸さんは“きらきら”しています。
“きらきら”して見えるのはなぜ?
PROFILE
石丸さなゑ
5つの肩書きをもつ女性経営者。広島・福山で“初”に挑み続け「大人女子」に人気の飲食店を手がける。現在、(株)Sakkuruとして飲食店6店舗、エステ2店舗、お菓子工房1店舗の計9店舗を経営。
未来の自分を追いかける
キャリアのスタートは?
どちらかと言うと、黒子に徹してきたタイプです。24歳で入社した会社で、経理の仕事から始まった。ベストを尽くす。その一心で働いていたら評価していただいた。期待に応えたい。そういう気持ちでやってきたのかな。誰かに必要とされるのが一番の快感なんです。見方を変えれば「ノーと言わない石丸です」(笑)頑張ったら評価されて、お給料が上がって、みんなも喜んで、こんなに人生楽しくなるんだ!って。仕事ってすごいなという入り口を知った。
当時はパソコンのことも、経理のことも何も分からないから夜中まで必死に勉強しました。自分を褒めるなら、先を見ていたってことですね。例えば、売り上げが倍になったら?10倍になったら?取引先の数が増えたら?今だけではなく、先を見据えた仕事や仕組みづくりを徹底していました。目の前にあることだけを考えて仕事をしていたら「会社は大きくならない」って。そういうやり方をしていた自分は褒めてあげたいね。
頑張れるのは元々の性格ですか?
コンプレックスだと思う。コンプレックスを払拭したい。その方法を知るために本もたくさん読んだ、知識が増えると見えるモノや見え方が変わってきた。“すごいな”と思う人が目の前にいたときに、自分が“すごいな”と思ってもらうためにはどうするの?今の自分じゃダメだと気づいた。変わりたい!脱皮したい!と本気で思って、本気で考えて、思考が変わったんだと思う。若い頃は本当にファンタジーで…愛読書は「星の王子様」(笑)目に見えないものが大事なんだーとか思ってたような子だった。学生の時は、平和主義者でリーダーにはなれない、ムードメーカーにはなれるけど、プレッシャーに弱く、責任とか大キライで。だから学生の時の友達は、よっぽど従業員さんが優秀なんだねっていいます(笑)
石丸さんは「事業を拡大するぞ!会社を大きくするぞ!」というタイプの人だと勝手に想像していました。
でも、印象が変わった。
“ギラギラ”じゃなくて“きらきら”してた。
今の石丸さんがあるのは、知見や視野を広げてきたから。人間関係を広げてきたから。自分の能力を限界まで磨いてきたから。とにかく“やってきた”からだと思う。
まずは、自分にできること。
まずは、自分ができること。
汗をかいた分だけ、流した涙の分だけ、やった分だけ“きらきら”できる。
自分にしかできない仕事は、周りが決める
私は「経理のプロ」。だからって“経理のこと”で稼いでも普通じゃないですか。私のチャレンジは「私じゃなきゃできないことを作ること」って思っているから。私を「必要です」って言ってくれる人が何人いるかっていう自己満足ですよね。誰かにそういってもらえることが、私にしかできないこと。
山があるからそこに登る
私は山があるからそこに登るのと一緒。“この人”がいるから“この人”のためのお店を作る。例えば、和食屋で2年くらいアルバイトをしていた男の子がいたんですね。物静かで、何をやっているかも自分からは主張しない。でも「イタリアンで十何年修行していた」と。「え、じゃぁパスタ作ってみてよ」ってお願いしたら「作れません」っていうんですよ。ちゃんとした材料がないからって。だから、私たちは「あの子は修行していたっていうけど、本当は料理できないんだよ」って疑いの眼差し(笑)でもね「ねぇ、店長が辞めるからあなたがやってくれない?」って始めてみたら、バルじゃもったいないくらいの力量で、今はもう貸切レストランみたいなマニアが集うお店になっちゃいました(笑)ミスター週休4日男って呼んでます。営業日は週に3日だけ。2日は料理の研究をしてるんです。お願いだから、自分の給料分は稼いでね。って(笑)
エステもやるつもりなんて全くなくて…たまたま使い道を迷っている物件があったときに、ずっと通っていたエステティシャンの方と再会して。ドラッグストアで(笑)「今何やってるんですか?」って聞いたら「何もやってない」と。「じゃ、エステやってみる?」って(笑)
石丸さんが手がけている事業には
「人との出会い」が隠れている。
一つひとつのお店に
ページをめくるような物語がある。
「職人さんの聖域には踏み込まない、厨房には入らない。冷蔵庫も開けない。」
石丸さんは“結果”に期待して、誰かを信じている訳ではないと思う。
“この人はきっと私を裏切らない”ではなく、
“この人に裏切られたら仕方ない”
そんな感じなのかな?
聞くの忘れちゃいました(笑)
でも、そんな気がする。
“信じる”ことは相手にとって重荷にもなり得る。
ひとりの人として、向き合って、受け止めてくれる。言うべきことはきちんと言ってくれる。
一方通行ではなく対等な関係であることを常に意識されている。
だから、石丸さんの言葉は、
胸に刺さって、心に染みる。
自由を勝ち取るためには9割我慢
私は60歳までしか働かない。いや、働けない。集中してるから仕事が生活なんですよ、私。だからオンオフとか意味が分からない。でも、自由に働いている。自由は掴み取らないと、勝ち取らないといけない。自由を勝ち取るためには、9割は我慢なの。自分が自由になろうと思ったら、次の主役を作って、私は脇役にならないといけない。脇役は脇役でも名脇役ね(笑)誰かに仕事を任せようと思ったら、9割は我慢だよ。10回でダメなら100回、とにかく伝わるまで言い続ける。そうしないと組織は回らない。組織は作れない。それでも伝わらない時は“笑いながら”怒るの(笑)そうやって1割の自由を勝ち取るの。その1割に感謝しないと!
責任と、利益
努力で人は変われる。要は訓練。でも、一人じゃ絶対無理。責任感とチームがないと、自分を追い込めない。一人だったら怠けてしまう。私だってずっと寝てたい(笑)でも、誰かのためだったら、誰かが待ってると思ったら、やるしかない。私は怠け者だから、そうやって自分を追い込んできた感じ。あとは、利益。利益がないと人は長くは頑張れない。何ために頑張るのか、苦労するのか、それをセットで考えないとダメ。
人それぞれ価値観の違いはあるけど、私にとって一番の悲劇は“退屈な人生”を送ること。だから私にとって「自分を知る」っていうのは大事な作業。私は「自己分析のプロ」でもあると思ってる。自分の得意なこと、不得意なこと、自分が活動的になれる時間、動きが鈍い時間、そういうことを20年以上、徹底的に考えて、分析してきた。そうやって「あるべき姿」を追い求めてる。そうやって自分を変えてきた。本当の自分ってなんだろうと思うくらいに。環境も同じ。場所を変えてみたり、時間を変えてみたり、相手を変えてみたり。自分にとって一番居心地のいい環境を作ってきた。それをしないで自分の境遇を愚痴ってたらちょと悲しいよね。環境は“改善”するより“作る”ことの方が難しいと私は思ってる。私は環境を作り上げてきた人間だと自負してる。
責任と、利益。
言われてみればその通り。でも、別々に考えていたことは山ほど思い浮かぶ。
「何でこんなにしんどい思いをして頑張らないといけないんだ」
「もっと稼ぎたい。お金やモノや評価を手に入れたい」
「今の苦労は、この時間は、〇〇のために使っている」と考えることができれば視界や思考はきっと変わる。
責任と利益をはっきりとイメージできればもっと頑張れる気がする。
「あれを手に入れたい、これを手に入れたい」と夢を見続けるだけでなく。
「私にはまだまだ我慢が足りない」と自分を追い込んで苦しむこともなく。
嘆きたい現状に蓋をせず、目をそらさず、愚痴をこぼしながらでも、環境を変える。
責任と、利益を忘れずに。
一隅を照らす
石丸さんにとって最後のお店「一燈照隅」
それくらいの気持ちが込められたお店。
そこで出される一皿。
一燈照隅
2022年12月18日。広島県福山市に実店舗オープン。ご紹介のお客様のみをお迎えする限定8席の隠れ家的な料亭。 各界の著名人が愛した幻の料亭「播半」で修行した総料理長元嶋明朋が、研ぎ澄まされた感性と熟練の伝統技法で、瀬戸内地方の豊かな食材を使った「一期一会」の料理をご提供します。季節を誂え、料理でこころとカラダを整える。名料亭「播半」で修業を積んだ料理人が生み出す調味料を極限まで抑えた、一切ごまかしのきかない引き算のお料理をお楽しみください。
「一隅を照らす」っていうのは、私のテーマなんですよね。見えないことにこそ光を当てていきたい。主役にしたい。バルの店長なんて、社会的なコミュニケーション能力だけでいえば本当に足りてない(笑)でも、お料理に対する熱量や力量はすごいの。元嶋さんは、お料理にものすごく夢中でお料理だけを見てきた人生。「この人のためにもう一回だけ頑張ろうかな」と思えたの。この人を、このお料理を、もっと知ってもらいたい!と思って。このお店以外は全てオファーをもらって始めたけど、ここだけは自分で。なんかこう熱量で。最後の飲食店だと思ってます。お料理も経営も経理も引き算が大切。そういうお店にしようと。
食材は余すことなく全て使います。だから「同じ食材」で出汁を引く。例えば、ほうれん草のおひたしだったら、ほうれん草をお出汁にひたして1日寝かせるんですね。それから一旦とりだして、そのほうれん草でとったお出汁に、少しだけ味付けをして、もう一回ほうれん草を戻して仕上げていく。だから、ひとつのコースを提供するために一週間くらい時間がかかることもあります。そうやって丁寧に作るから胃にもすごくやさしいの。
「一燈照隅」が照らすのは「食材」
石丸さんが照らすのは「人」
イズムを受け継ぐ
サックルって北海道の地名なんですよ。親会社の社長の出身地なんです。もしかしたら無くなるかもしれない小さな集落。でも、会社だったら残るじゃないですか。意思や想いを継ぐってことでサックルという名前になった。だから仕事のやり方や楽しさや厳しさを教えてくれた会社や社長に恩返ししたい。でもね、何かを返すんじゃなくて、私が教えてもらった“イズム”を次の世代に渡していく。それが、今の私の仕事であり恩返しだと思ってます。そのために飲食だったり、エステだったりがある。
石丸さんと一燈照隅の総料理長の元嶋さんは、いつか料理学校を立ち上げてみたいと考えられているそうです。
いろんな想いや伝統やイズムに光を当てて、受け継いでいく。
「一隅を照らす」
素敵な言葉です。
そういえば、“きらきら”してるって何だっけ?
辿り着いた私なりの答えは「ダイヤモンド」
自分を知って、自分が一番きれいに輝ける形を知って、磨き方を知って、磨き続けて。
だから石丸さんは“きらきら”してる。
“きらきら”したいなら、まずは自分を知って、自分を磨いて、動き続けること。
いつか光り輝ける日が来ることを信じて。
いつか咲く日が来ることを信じて。
Sakkuru 石丸 さなゑ
(取材日:2022年11月12日)
(写真は提供いただいたものを使用しています)