CAFÉIZM

珈琲豆の香りを手掛かりに、

美味しさの向こう側を覗いてみよう。

広島市の横川駅北口から徒歩で5分ほど。

2020年6月に開業された
「CAFÉIZM(カフェイズム)」

装飾は控えめで、シンプルな店内。

“出来るところは自分で”とマスターが手がけた内装には温かみを感じる。

昼間は、やわらかな雰囲気に包まれながら“ほっ”と一息。

夜になれば、大人の落ち着いた雰囲気に包まれながら、今日の締めに“ごくっ”と一杯。

楽しみ方は人それぞれ。

日常から切り離された空間ではなく、日常に溶け込むカフェ。

CAFÉIZM(カフェイズム)

泉 悠壮(いずみ・ゆうそう)

広島市西区三篠町1-8-2 酒井ビル1F

バリスタがお客さまの目の前でドリップ

自家焙煎から1週間以内の豆のみ使用

徹底したハンドピックで欠点豆を取り除く

水研ぎ→湯浸し→W焙煎の工程で温度管理を正確に行い安定した高品質の焙煎を実現

珈琲好きなら一度は飲んでみたくなりませんか?

逆に、珈琲好きでも“お行儀よくしておかなきゃ…”と思われる方もいるのでは?

それとも“ブラックは飲めないから、行っても…”と思われますか?

私は真ん中くらい。

コーヒーメーカーは持っています。

毎朝コーヒーを飲みます。

コンビニのコーヒーならロー○ンが好き。

そんな感じです。笑

ふらっと立ち寄り、珈琲とカレーを注文。

帰り際に“あらためて取材させてください”とお願いしたところ、快く了承してくださいました。

1時間の予定が気づけば2時間半…

お休みの日に長居をしてしまった。

珈琲との“出会い”を聞かせてください。

料理を作ったり食べたりするのは昔から好きでした。2年くらい前に“自宅で簡単にできないことを一からやってみよう”というブームが我が家に到来して。ピザを生地から作ってみたり、パンを焼いてみたり。その時に、生の珈琲豆をローストしてみたんです。知識もなければ道具もない。フライパンを15分くらい振り続けました。それが、すごく美味しかった。勉強して、道具を揃えたらどれだけ美味しくなるんだ!?と思って。

開業(2020年6月)までの経緯を教えてください。

サラリーマンとしての転機を迎えたこともあって、(2020年)3月に勤めていた会社を退職しました。転職先と物件を探していたら、物件が先に見つかった。それで、やってみようかなと。退職前から“お店を出したいな”とは思っていたので働きながら妄想してました。笑 ドメインを取得したり、コンセプトを練ったり、価格を決めたり。

妄想の域を超えています。笑 知識や技術はどのようにして身につけられたのですか?

修行されたんですか?ってよく聞かれるんですけど、独学です。修行したり、習ったりすれば、すぐに解決できることもあると思うんですけど、自分で考えながら、実験しながら答えにたどり着いたほうが、その後のパフォーマンスが格段にあがる。独学が最強だと思ってますね。昔から“なんでだろう”が放っておけなくて。気になると、こーしたら?あーしたら?と実験したくなるんです。

お客さまの目の前でドリップしようと思われたのは、なぜ?

焙煎しているときや挽いたときの豆の香り。珈琲豆の香りを味わうのが一番贅沢な瞬間だと思うんです。カップに注がれた珈琲では、それが味わえない。だから、目の前でドリップする。他のお店にはないポイントだと思いますしね。

セルフドリップを注文されるお客さまもいらっしゃいますか? 失礼かな…と思ったり…

いきなりセルフドリップを注文される方は、ほぼいらっしゃらないですね。でも、何度か楽しんでもらえたらセルフドリップも遠慮なく注文してください。人がやってるのを見てると、自分でもやりたくなりませんか?自己流でOKです。“お湯の注ぎ方”や“蒸らす時間”に目を光らせたりはしないです。笑

“珈琲=こだわり”みたいなイメージがあって…

自信をもってお客さまに提供して、それが好みに合わないことはあるだろうし、だからと言って“これが正解なんだ”と押しつける気はないです。“素人でごめんね”とか“味が分からなくてごめんね”とか、気を使っていただく必要もないですよ。こだわるのは自分のためですから。自分の100%を自信をもって提供する。ものさしはどこにもない。お客さまが僕を飽きさせてくれない。笑

接客で大切にされていることは?

私自身のキャラクターも知って欲しいなと思うので必ずひと声かけるようにしています。寡黙ではないし、ひと笑い欲しい性格だし。笑 ゆっくりされている時は邪魔しちゃいけないなと思うのでお会計の時とかね。あとは、必ずお見送りするように心がけています。

お悩み相談が混ざってしまいました。笑

でも、相談したくなる気持ちも分かってもらえるはず。

泉さんのこだわりはすごいです。

“いやいや、こだわってないですよ”とか

“私もよく分かってないですから”とか…

そんな言い方は絶対にされない。

きっと、自分の100%を否定することになるから。

自信がないものをお客さまに提供することはないから。

職人という言葉がよく似合う。

泉さんと話していて、ふと思った。

“好み”は違いを測る基準ではなく、発見のきっかけなのか?

「お客さまが僕を飽きさせてくれない」

それなら、自分の“こだわり”や“好み”を押しつける必要がない。
泉さんの言葉を借りると“理解されない美学”でもあるらしい。

やっぱり“こだわり”がすごい。笑

だからこそ、味わい深い。

…あと一つ、悩みを相談。

コンセントが使えたり、ネット環境が整っていたり…居座ってもいいんですか?迷惑になりませんか?笑

好きなだけいてください。迷惑だと感じることはないです。外から見たときに他のお客さまがいたほうが入りやすいでしょ?遠慮なく居てもらって大丈夫です。満席のときは、“私、出ますよ。”ってお客さまが気を利かせてくれますし。他のお客さまに迷惑かな?と私が感じる行為があれば“○○はご遠慮ください”って笑顔でカンペでも出します。笑

外観も内装も雰囲気もカフェなのに、店内に流れる空気はまるで喫茶店。

落ち着いた空間で、ゆっくりとした時間の流れに身を任せる。

というよりは、“もうこんな時間”

時間の流れを忘れさせてくれる。

珈琲を楽しむ“だけ”ではもったいない。

綺麗な所作で
ドリップしてくれるマスター。

ときには興味本位で
セルフドリップしてみる、わたし。

窓際でカップ片手に
物思いにふけている、あなた。

店内の片隅で
読書に没頭している、あのひと。

お客さんの笑い声がBGMに。

マスターの“ひと笑い”をアクセントに。

役割を与えられるわけでも、求められるわけでもない。主役も脇役も決まっていない。

わたしがいることに、あなたがいることに、違和感はない。

皆でCAFÉIZMを創りだす、静かなセッション。

実際にお店を出してみて“良かった”と思われますか?

めちゃくちゃ思います。間違いなかった。やってみないと分からないことはいっぱいありますけど、“こんな風にしたら喜んでいただけるんじゃないか?”と練ってきたコンセプトがあって、実際にお客さまから“いいね” “美味しい”って言ってもらえると嬉しいし、届いたって思います。事務作業は嫌いというか苦手ですけどね。笑 片付けや仕込みで帰りが遅くなることがあっても、お店にいるのが嫌じゃないし、ワクワクしますよ。

好きなことを仕事にすると、理想と現実のギャップに直面すると言われていましたが、違いは?

(車好きということで、新卒で入社された会社では車の営業・販売をされていた)

20歳くらいでお店を出していたら、“良かった”とは思えていないかもしれないですね。歳を重ねて、社会人として経験を積めば、仕事のやり方が変わったり、許せなかったことが許せるようになったり、諦めることを覚えたり…今だからっていうのはあるかもしれない。でも、一番違うのは中身。自分が考えて、想いを込めて、生みだす喜び。生みだしたモノにお金をもらえたり、美味しいって言ってもらえたり。それが、どれだけ幸せか。

マスターの魅力はまだまだ尽きない。

車を売ったり、医療関係の営業をやったり、ギターを弾いたり、ラジオのパーソナリティをやったり。

独学が信条の僕が強いて師匠と言うなら、「なんでだろう?」を繰り返すテツandトモ。始まりはいつも、小さな疑問からだから。

これまでの経験が活きているところ?全部です。全部が詰まっている。役に立っていないことなんてない。

生まれ変わったら?考えたことがないかも。人生に対してはサボったことがない。仕事はサボってもね。笑 どこを切り取られても、これが自分の人生だと自信をもって話せるし、自信をもって話したいと思って生きてきた。

人生相談?僕でよければいくらでも、50円で。

ショップカードにこう書いてある。

Bring another surprise to you.

ちょっとした驚きや気分が変わる演出を見逃さないように。待つだけではなく、探してみても面白い。

全部見つけた!と思った頃には、きっと新しい“驚き”や“気づき”や“演出”が増えている。

一度や二度では足りない。

“また来よう”そう思えるお店。

CAFÉIZM

珈琲豆の香り

(取材日:2020年11月9日)

(写真は提供いただいたものを使用しています)

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