くにた鍼灸院

真面目、誠実、冷静?
いや、やっぱりめちゃくちゃ熱い人。

広島市南区似島町。

広島港からフェリーで20分。

広島市内の島としては最も大きい
「似島(にのしま)」

2018年4月、似島に単身で移住し、鍼灸院を開業された方がいる。

フェリー降り場のおっちゃんに聞いてみた。

「くにた鍼灸院に行きたいんですが」

「おぉ、國田さんのとこに行くんか。話せば分かる、あいつはいいやつで」

PROFILE

くにた鍼灸院(國田 将平)

2018年4月に似島に単身移住。同年7月に「くにた鍼灸院」を開業。民泊・キャンプ場の管理運営も行なっている。社会人バスケットボールチームのヘッドコーチという横顔も。

【資格】鍼灸師・漢方茶ブレンダー・防災士・狩猟免許(わな猟)・BBQ検定・NEALインストラクター(自然体験活動上級指導者)

【実績】2020年12月、任意団体「NINO」を創設。「NINOキャンプ場」での自然体験活動をメインに地域の課題解決・来島者と繋がる活動に取り組む。

<ひろしま『ひと・ゆめ』未来塾>

第6期:起業準備コース_最優秀賞受賞

第7期:起業準備コース_メンター

第8期:地域密着型人材育成コース_メンター

フェリーを降りて、似島桟橋から歩いてすぐ。

徒歩で3分くらいの場所にある「くにた鍼灸院」

取材日はあいにくの雨…島内を散策することはできませんでしたが、島内を一周すると約10km。

いつもと違うランニングやサイクリングコースを探している人にはちょうど良い距離です。

二人乗り自転車のレンタルもあるみたいです。

似島にはホタルもいるらしい。見てみたかったー。

(似島の島内マップ等はコチラから)

似島との出会いは?

日帰りサイクリングで訪れたことがきっかけです。似島を訪れたのは小学校の野外活動以来。島ならではの風景や空気感に惹かれました。広島市内からすぐの場所にこんな自然豊かな場所があるのかと。その後も下調べをかねて何度か島を訪れ、タイミング良く住むところも空いていたので「悩んでいる暇はないな“ここ”で開業しよう」と決意しました。まずは、3年をメドに。と思っていました。来月で丸4年になります。

なぜ、似島に?

似島で開業する前は広島市内の整形外科で働いていました。鍼灸師の資格を取ったのは、道具があればどこでもできる、医療に恵まれない地域で鍼灸施術を行いたいと思ったからです。例えば、似島だと施術をうけるためにフェリーに乗って市内に行って、またフェリーで帰ってきて…帰ってきた時には疲れちゃいますよね。広島市内で開業しても自分だけの役割ってないと思うんです。似島でしかできないこと、自分にしかできないこと。鍼灸師を軸に自分の役割を果たしたいと考えています。大変だけど、面白いし刺激がある。どうやったら良い方向にいくかを考えるのも好きだし、それが楽しい。苦しいという感覚はないですね。

安定こそ、発展性がない

國田さんのブログで見つけた一文。

安定した給料をもらいながら「地域おこし協力隊」として似島に関わるのではなく、移住して開業するという選択。

協力隊がやりたいわけではない、鍼灸治療を手段の一つとして地域を活性化させるという強い想い。

こんな決断は、なかなかできない。

私が口にするのは失礼を承知で「愚直」な方だと思う。

融通がきかないとか、知恵がないとか、そういう意味ではない。

良いことも悪いことも理解して、考えて、受け入れて、「進む」という選択をされている。

胸に秘める想いを全面に出されることは、あまりない。

だからこそ、言葉の端々に見え隠れする信念に惹きつけられる。

地元に倣う

地域を活性化させるんだ!と自分のやりたいことや主張を相手にぶつけても良い結果にはならない。まずは、地元に倣うことが大切だと思います。時間はかかるけど、相手を理解する。近所の草刈りでも良いし、掃除でも良い。相手や土地に敬意を持って、自分から歩み寄る。そこからだと思います。簡単ではないし、苦労もある。勘違いされることだってある。だからこそ、しっかり話をして、本心や真実を伝えていく。

物腰が柔らかく、口調も丁寧で、ひとつひとつ言葉を選んで話をされる。

持って生まれた感覚なのか、移住して磨かれた感覚なのか。

バスケットチームのヘッドコーチとしての経験なのか、NEALインストラクターとしての経験なのか。

答えはきっと全部。向かい合ってお話ししたのは今回だけだが、國田さんはよく考える。

思いついたことをそのまま口にするタイプではないように感じた。

立場や場面によって自分の知識や経験を組み合わせて、話し方や振る舞いを変えられているように思う。

「会話」と「対話」の違いさえ普段から意識して使い分けられている気がする。

嫌らしさは一つもない。

自分の考えをきちんと伝える、相手に対して失礼がないように。

そんな誠意を感じる。

それが、國田さんのヒトトナリ。

島に暮らし、島を歩いていると
地域の悩みごとが見えてくる

島を歩いていると地域の悩みごとが見えてきます。“スマホの使い方がわからない”とか“掃除機が壊れた”とか(笑)。何てことないことですが、僕がいなかったら掃除ができない、市内から業者を呼べばお金も時間もかかる。そう考えると自分の立場で何ができるのか、どうあるべきなのか、自ずと考えるようになった。そういう流れの中で活動の幅を広げてきました。

國田さんのブログを読んでみると、時間とともに活動内容や資格がどんどん増えていく。

2019年10月に民泊運営開始。2020年12月には任意活動団体NINOを立ち上げ、NINOキャンプ場の整備や管理。

と言っても、キャンプ場は「整地」から。樹木を切ったり、側溝の掃除をしたり、水を使わないコンポストトイレを設置されたり。その際には自然エネルギーを学ぶために能登まで行かれたり…行動力がすごい。(能登での研修の様子はコチラ

今後は“似島の名産である牡蠣の殻を活用した水作り”や“空き家をリノベーションして移住者用の住居やゲストハウスとして活用する計画”もあるとか。

似島にないものを取り入れるのではなく、似島にあるものを活用したり、組み合わせたりして価値や魅力を生み出す取り組み。

それが、とても素敵だ。

鍼灸師の仕事がおもしろい

色々なことをやりすぎたなと思うところはあります(笑)。でも、軸は変わっていません。これからは一つ一つの活動の質を高めていきたい。鍼灸師の仕事にもあらためて面白さを感じています。整形外科で働いていた頃は、一人の患者さんにとれる時間がどうしても限られていました。鍼灸師としての知識や技術をどれだけ勉強しても発揮しきれないジレンマがあった。でも、今は違います。鍼灸師である前に「人」として患者さんに向き合うことができる。人としての関係性を築いていく。そこに面白さや鍼灸師としてのやりがいを感じます。

人を増やすことを考えるよりも…

初めは似島にたくさん人が来てほしい!と思っていました。最近は自分が持っている感覚をどうやって伝えるか、共感してもらえるかを考えています。「似島は良いところ。素敵なところ。」という自分が感じる似島の魅力をどう伝えるか。“人を増やす方法”自体を考えてもあまり意味はないように思います。例えば、ランニングやサイクリングで似島に来たら、汗を流したくなるじゃないですか。立ち寄れる場所や知り合いがいれば、少しでも長く似島に滞在しますよね。滞在時間が長くなれば魅力が“伝わる時間”も“伝える時間”も増える。僕がいることで手伝えることがある。そういう場所や時間を増やしたい。

私は今回、生まれて初めて似島に行った。

なぜ行ったのか。

國田さんがいたからです。

國田さんがいなかったら、多分この先も似島に行くことはなかった。

たった数時間、似島に立ち寄ったらからといって何かが変わることはない。

それでも國田さんがいたから私は似島に行った。

これってすごいことだと私は思う。

海と山に囲まれた自然豊かな風景、ゆっくりとした時間の流れ、穏やかな空気感。

忘れかけている無くしちゃいけない、無くしそうになっている「日常」が似島にはある。

何をしてもいい、何もしなくてもいい、似島に身を任せる。

そんな贅沢な時間の使い方ができる島。

くにた鍼灸院

(取材日:2022年6月11日)

(写真は提供いただいたものを使用しています)

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